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伊401と行く@呉・江田島(番外編)

ここまでの内容

 目的地にしていた第一術科学校で運良く内覧することができた。番外編として、その様子をしおいちゃんと一緒に紹介したい。物語の都合上、登場人物のセリフなど、事実を歪曲しない程度の脚色を加えることがある。その辺りを理解した上で読み進めてもらいたい。

ガイド開始まで

 受付を済ませると、控室で待つように指示を受けた。控室に向かっていると、まず、目を引いたのはこちらの看板だった。

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 超・地元臭のするコンビニだ。ポプラを悪く言っているのではないが、広島には居るんだって気分にはなる。もちろん、うちの近所にもある。だが、「コンビニはその土地の生活を表している」とよく聞くので、内部を観察することにした。(調べた所、別に広島県に限定されたコンビニではないらしい。お詫び申し上げます。[2018.2.18])

 写真撮影はご遠慮くださいという指示だったので、書記体系での説明にはなるのだが、制服が売られていたり、お土産が売られていたり、というように、見た感じだと学生・候補生が使うだけでなく、観光客向けにもなっているようだった。個人的に心を揺るがされたのが写真屋さんの「ダンケ」という店舗名だった。

 しおい「ダンケ!ですって!」
 わたし「モノマネしないのっ」

 ところで、ポプラの良いところなのだが、コンビニ弁当だけど炊きたてのご飯をよそってくれる。みんな、広島に来たらポプラ行こう。パン屋さんと繋がっているところもあるから場所によっては焼き立てパンも食べられるぞ。

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 ポプラを後にして少し歩いたところ、脇に目をやると、用水路らしきものがあった。しおいちゃんが反応したが、「潜れないし飛び込むとケガするから」と窘めた。

 もし、ここ(自衛隊学校)が不審な行動をしても許されるような場所だったら、終点に向かって歩いているかもしれない。指示以外のことをしたら何か罪に問われるような気がして、ここは大人しくすることにした。

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 いやー、立派な建物だ。このレンガも普通のレンガと違う。写真では伝わりにくいかもしれないが、まるでタイルを焼くときの高い温度でレンガを焼いたような、そんな表面だ。だいたい、1000度もあれば、この手の石というものは溶けてしまうので、溶ける一歩手前の温度で焼いたみたいだ。気持ち、ふつうのレンガよりも小さい。

 レンガを触るなどして観察をしていると、定刻の13時になった。これから90分、ガイドさんと一緒に施設の見学をする。

わたし・しおい「今日はよろしくお願いします」

ガイドさん  「こんにちは、よろしく」 

新入生の訓練内容

「まず、左手の山を見てくれるかの。あれは、古鷹山という山じゃ。標高は394m、我々にとっては思い入れのある山での」

「どうしてでしょう」

「この第一術科学校に入学してきた学生が最初に行う訓練、それが基礎訓練としての登山と声出しだからじゃ。具体的な内容はの、まず古鷹山まで全速力で走ってもらうんじゃが、早い学生で20分くらいじゃったかの、到着後、教官が『今日は声出し』と言えば、そこで声出しの厳しい訓練が始まるんじゃ。

「山頂から現在地までが10kmほど、ここまで聞こえるように、1人ずつ声を出してもろうての。聞こえたら終わり、聞こえなければ、ずっと声を出し続けてもらう、というようなものじゃ。

「無論、人間だから限界というものはある。20秒もすれば声は出んなることじゃろう。しかし、合格しなければ『お前のせいで後ろがつっかえとるじゃろうが』のように怒られてしまうけえ、皆、必死になって声を出し続けるんじゃ、ヒッヒッヒ」

「ひぇ…提督でよかったー」

「古鷹山での訓練が5ヶ月、これが終わると宮島の弥山での訓練に移る。麓から山頂までのタイムを計測するけえ、その準備を、ここ、古鷹山にて行うというわけじゃ。

「じゃけん、新入生だけとは言わず、我々のような年寄りでも、たまに古鷹山に登って当時のことを思い出しているというわけじゃ」

「お姉ちゃんもココでスゴい訓練をしてたのかなあ」

 大講堂

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「この建物は大講堂、入学式と卒業式以外では一切使用されることがない建造物じゃ。たまに、ドラマ撮影などで使用させてもらいたいというのはあるんじゃが、基本的に立ち入りをしてはならない場所じゃ。*1
「この入口は、高貴門と言って、皇族関係者以外、ここから館内に入ることができないようになっておる。それ以外の人は、この入口の裏から館内に入らなければならない決まりなんじゃ。で、俗称で平民門と呼ばれておる(笑)」

「ここ、笑うところなんですかね…」

「冗談の通じない若者じゃの、ったく」

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「この建物を見て何か思ったことはないかね」

「えー…どうでしょう。最近建てられたみたいに綺麗なのですが、建替の工事とかが行われたのでしょうか」

「ほう、中々鋭いところに目を付けおるわい。これが、最近建てられたように綺麗なのは御影石という特別な石を使っているからなんじゃ。今年が2018年、これが建てられたのが1918年じゃけん、ちょうど100年、一度も建替を行ってはおらん。ただ、耐震補強のために少しばかり工事はしておる。その時に石を磨いたから真新しい建物みたいになったんじゃ。

「じゃが、緑色っぽくなっているところを見てみい。あれは、銅でできておってのう、一度は石と一緒に磨いて綺麗にしようっちゅう案も出たんじゃが、『歴史を一切感じさせなくなってしまう』という理由から廃案となってしまったんじゃ。海軍っちゅう組織は一つ何かが論題に上がると十も意見が出てくるというのにな、この議題に関しては満場一致で決まったんじゃと。今日まで、ずっとこの佇まいを保っているんじゃ」

「それもそうでしょうね、新しい銅の輝きは好きですが、今の緑色になってしまった銅は重みが増して何かを背負って来たのだろうと感じます」

「今日は特別に中に入ってええことになっておる。入るがよい」

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「わっ、すごく音が響く…今日はソナーを置いてきたのになあ」

「ホントだね、建物がぜんぶ石でできているからだと思う。それに天井がアーチ型になっていて音が跳ね返りやすくなっている。まるでパラボラ・アンテナみたいだ

「それだけではないぞ小娘。あの天井にぶら下がっとるシャンデリアの裏には和紙が貼り付けてある。和紙を貼り付けると音が跳ね返りやすいんじゃ。単純に石だけを使って音を反響させているわけではない」

「なぜ、和紙を貼り付けると音が跳ねやすくなるなるのでしょうか」

「それは、ワシに訊いても分からん…プークスクス」

「……」

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「柱を見て、しおいちゃん。菊が型どってある」
「はあーそう来たかー!アリです!」

「この赤いカーペットは、成績優秀者しか登ることを許されないことになっておった。昔は成績順に卒業証書を受け取っていたんじゃが、今は何かとうるさい時代になっておるからの、現在は五十音順で証書を受け取るようになっておるんじゃ。

「そして、受け取ったらそのまま任務に就く。証書を受け取るよりも前から自分がどういう役職に就くのか、どこへ行くのか、そういったことが決定していた。大砲を撃つ人であれば、定年するまで大砲を撃ち続ける、料理する人であれば、定年まで料理を作り続ける…それが海軍、海兵隊員の一生なんじゃ」

「成績優秀者というのは、どれくらいのレベルなんでしょう」

「昔は、中学校で1番良い成績を取って卒業した者が海軍へ、2番目の成績を取って卒業した者が陸軍へ、そしてそれ以外の人間が東大や京大に進学していく…というような時代じゃった、とでも言えばスゴさが伝わらないかの。

「もちろん、ここに入学してからも競争がある。それは次に見せる幹部候補生学校で説明することにしよう」

「昔は現在のように私立学校が乱立していなかったですし、お金持ちも少なかったでしょうから、相当な競争率だったのでしょうね…ご回答、ありがとうございます」

幹部候補生学校庁舎(旧海軍学校生徒館)

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「わーーーー!広ーーーい!!!スゴい建物ーー!!!!!」
「しおいちゃん、走り回っちゃダメよ!」

「芝生になっているところに入らなければ良い。ここの庭は全て国有地でな、そこに生えている松でさえも国のモノなんじゃ。決して触れてはならんぞ。

「ここは、幹部候補生が学ぶ場所でな。平たく言えば、これから偉い人になっていく予備軍だけが集う場所じゃ」

「先ほどおっしゃっていた競争というのは…」

「なに、簡単なことじゃ。各都道府県から首席が集まってきたとしても、第一線で銃弾を浴びる危険を冒して戦う海兵と、参謀として鎮守府に留まって指揮を執る海兵とで別れるということじゃ。優秀な人間のうち、さらに頭ひとつ分飛び抜けて優秀にならんと出世コースから外れるんじゃ」

「おもっている以上にシビアな世界なんですね...」

「じゃが劣等感というものは、みな抱いておらん。なぜならの、彼らは海軍に入隊したという事実を誇りにしているからじゃ」

「さて、建物の大きさじゃが、戦艦大和の半分くらいかの。英国の建築家が設計して、素材もイギリス船で運んできたレンガを使用しておる。1枚につき現在の金額で2万円じゃ。

「今は予算の都合上で無いなっとるが、ひとつだけ国産の材料が、過去、あの屋根に使用されておった…岡山県備前焼っちゅうのは知っておるか」

「もちろんです。花瓶なんかに使うと、空気をよく通すので水が腐りにくく、植物が長生きするんですよね」

「左様、その瓦を使用しておった。じゃが、昔、広島で芸予地震が起こったとき、一部が崩れてしもうての…それを直そうとなると大変な予算を組まんといかん。じゃけん、瓦屋根だけは取り外すことになったんじゃが、外装は1983年以来変わっておらん」

「そういえば、このレンガは待合室のものと同じですが、作り方とかご存知ないでしょうか」

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「ワシにも深いことは分からん。じゃが、ふつうのレンガよりも高温で焼いていることは間違いない。たしか、普通のレンガが400℃で焼かれるのに対して、このレンガが焼かれるときの温度は800℃、ほいで表面が溶けてしもうて肌触りもなめらかに感じるんじゃろうな」

「やはりそうでしたか」

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「あー…素敵な佇まいだ」

「この裏はもっと面白いものが見られるぞ」

「まだ何かあるというのですか」

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「これは興奮しますね…こんな宿を造ったら流行りそう.......」

教育参考館

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「では、そろそろ最後のポイントに向かおうかの」

「だだっ広い場所ですね」「あそびたーい!」

「これから向かう場所は教育参考館と言ってだな、述べ1万点もの資料が保存されおる貴重な場所なんじゃ。本当であればここに4万点もの資料が保管されておったはずなのじゃが、敗戦処理の時期、証拠隠滅などを理由に没収されそうになったんじゃ。しかし、誰かの手に渡すくらいなら我々の手で処分しよう、ということになって、そのうちの3万点がこの広場で焼却処分となってしもうた。厳選して、厳島神社今治に隠しておいたものが辛くここに残った、というわけじゃな」

「そのような過去が」

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「左様、ここから先は、先人たちの魂が眠っておる。敬意を表し、脱帽すること、写真撮影等の行為は一切禁止じゃ。良いか、万が一、こういった行為を発見した場合、そのカメラや携帯電話がいくら大切なものであろうとも、永年、没収させてもらうからの。もし、分かっててやるのであれば、覚悟してやるようにな」

「外部の展示物は問題ありませんか」

「問題ない。先ほども言ったとおり、内部には東郷平八郎元帥を初めとする三大提督のご遺髪も供養されておる…最大限の敬意を払って、内覧するように。入ったら一礼を忘れないように」

 ― 40分後

「足りない…圧倒的に時間が足りない……」

「当たり前じゃ。普通に眺めていたら最低でも3日は必要じゃ」

「海軍発足の歴史、変遷、それに関わった数々の人々の歴史がこの館内に凝縮されていました…遺書のようなセンシティブな資料、山本五十六元帥が乗っていた航空機の部品、井上成美大将が愛用していた英語教材、勲章の数々…ああ、もはや貴重、という度合いを超えていました…必ずやまた来ます」

「今度はもっと勉強してから来るとよい。外の展示物は見なくてもよいのか」

「ああっ、すっかり館内に飲み込まれてしまっていました」

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甲標的潜水艇)、大和の主砲に積まれた弾、海龍、九三式酸素魚雷

「もう、満足です…もっと見たいけど今日はもう満足です」

「また来るとよい、ここは逃げも隠れもせん…。
「ところで、腹は減っておらんかの」

「あ、そういえば…」
「朝から何も食べてないねー、ていとくー」

「今日はカレーを仕込んでおるとのことじゃ。最近、巷では海軍カレーというのが流行っておるそうじゃが、ここのカレーは海兵学校のカレーじゃ。レシピは誰にも教えておらん。記念に食べて帰るがよい」

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「いっただっきまーす!!!!!!」(※700円)

 

  ― 後編へ続く

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*1:大河ドラマ坂の上の雲』で使用されたことで有名