a.k.a. Sakaki

旅行記と整備手帳と日々の声

チェイホフの猫

 アントン・チェイホフの作品中には,頻繁に猫が登場する。その物語のうち,日本語にも翻訳されている『臆病なのは誰のせい』という短編の1節をこれから紹介したい。

 飼っている子猫にネズミを捕ることを教え込もうとしたおじさんは,猫のいる部屋に一匹のネズミを連れてきた。しかし,子猫の狩猟本能はまだ発達していなかったので,ネズミには目もくれなかった。そこで,おじさんは子猫をひっぱたいた。来る日も来る日も,同じ過程が繰り返された。とうとう,おじさんは,この猫はバカ猫で,ものを教え込むことはてんでできない,と思い込んでしまった。子猫が大きくなったとき,他の点では正常なのに,ネズミを見ると怖がって汗をかき,逃げ出してしまうようになってしまっていた。

 おじさんが犯してしまった過ちは,その子猫に狩猟本能が芽生えるまで,辛抱強く愛情を持って子猫に接してやれなかったことなのではないだろうか。教師に必要なのは,子どもたちの知的好奇心を内側から刺激する授業展開と,彼らの能力が開花されるまでじっくりと待つ忍耐力や厚い同情だということを,この「チェイホフの子猫」から学ぶことができる。