a.k.a. Sakaki

旅行記と整備手帳と日々の声

閑話

 何かに対して貪欲であることは、しばしば「人格者」や「成功者」の性癖として扱われる傾向がある。しかし、これは成功者だけが目立っているから美談として語り継がれるに過ぎず良い事ばかりではない。その教訓は、以下に引く『イソップ寓話集』における「コクマルガラスと鳩」に得ることができよう。

 ハト小屋にある鳩の餌が美味しそうに見えたカラスは、同じ食事に預からせてもらおうと身体を白く染めて中に入っていった。黙っている間は鳩だと思われていたが、うっかり声を出してしまった途端、その声を怪しまれて小屋を追い出されてしまった。
 ハト小屋の餌を失ってしまったカラスは、仲間のところに戻っていったが、身体の色が白いせいで分かってもらえず、共同生活から閉め出されてしまった。こうして、両方を得ようと目論んで片方さえ得ることができなかった。

 この話を約言すれば「二兎追う者は一兎も得ず」や「あぶはち取らず」となる。無論、何かを得ることは取りも直さず何かを捨てることを意味している。しかし、飽くなき欲望は、現在、所有している物を失う可能性があるということも必要十分に考えなければならない。今、私はその分水嶺にいる。